示現流の精神

示現流とは如何なるものか、と人に尋ねられた時、重位は次のように答えたそうです。
示現流とは、自分が大切にしている刀をよく研ぎ、よく刃を付けておき、針金で鞘止めをして、人に無礼を言わず、人に無礼をせず、礼儀正しくキッとして、一生、刀を抜かぬものである。この話を裏付けるかのように、

重位自作の「木瓜」の鍔には、鞘止めの小孔が二つ穿ってあり、後に門弟のひとりが、敵が眼前に迫ってきた時この教えを疑うことなく刀に手をかけず、まさに敵に頭を割られたと思った瞬間、気がつくと自分は刀を抜きはなっていて、敵は二つになって倒れていたということです。
この逸話は、「刀は抜くべからざるもの」の教えが無益な殺生を戒めていると同時に、危急の際迷わず無念無想に打つ、という剣の極意を表しています。

稽古の内容

示現流の稽古では、一旦木刀を握れば、敵に対するのと同じ心境になることを求められるため、互いに礼をかわすことはありませんし、観衆に対しても同様です。
当流の基本である、右手で自然に振り上げた形に左手を添えた構えを「蜻蛉」と言い、そこから打ち下ろした形の構えを「置き蜻蛉」と言います。これらの構えが示している姿勢や太刀筋は、以後修得する技法の基礎を成すもので、構えがしっかりしていないと、技の全てに狂いが生じてくるものです。
稽古には、主に「立木打」と「型」があります。 立木打は、樫や椎、栗などの堅い木を二尺ほど土中に埋めておき、五間ほど離れたところから走り寄り「えい」の掛け声と共に右、左に打ち込むもので、間合い、手の内のしまり、腰の据わり、迅速な進退等を身につける稽古です。かつての修行者は、自宅の庭で人に隠れて稽古に励み、「朝に三千、夕に八千」打ったと伝えられています。

立木打(たてぎうち)

示現流の一番基本の稽古である。蜻蛉の構えから袈裟切りに立木を撃つもので、刀の太刀筋、手の握り、腰、気合いなどの修練を行うもの。

型稽古  

以下のように修行の段階に応じて分かれています。

初度両度 初段二段三段四段

燕飛、小太刀、

再起、三ッ太刀

持掛、早捨、

長木刀、振掛

槍留

立、双、越

寸、満、煎

平、安、行

軽、道、真

 

示現流の段位と称号

示現流には、当初より門弟の業の修得に対して与えられる「段位」 がある。 そして業の「段位」と同時に、人の位をあらわす「称号」も用いられる。 車の両輪と同意でどちらが劣っていても、伝授を与えられることは決してない。
以下はその「段位」と「称号」の関係である。

段位初度両度初段二段三段四段
称号初学学士賢 

一番最初に習う基本として「燕飛」があります。この型は、仕太刀(ツケ)が極意十二ノ打から成る技法で構成され、打出(ダシ)はタイ捨流の技に由来するものと言われています。重位が、師の善吉から習った技は、初段から四段までの十二本の打ちだけで、初度・両度・槍留等は重位が編み出したものであり、これらによって上達の階梯が整えられたのです。

 

示現流木刀寸法

・木刀・・・・三尺四寸六分【約105cm】
・小太刀・・・一尺七寸  【約51.5cm】
・早捨木刀・・四尺    【約121.5cm】
・振掛木刀・・五尺    【約151.5cm】
・長木刀・・・七尺二寸  【約218.2cm】